
日時 令和7年5月12日(月)13時30分~15時30分
講師 徳島県立阿波十郎兵衛屋敷 館長 佐藤 憲治 氏
佐藤館長の御経歴
1985年 徳島県庁に入庁
文化の森総合公園・郷土文化会館文学書道館など県の主要な文化施設の整備・運営や、阿波人形浄瑠璃、阿波藍、音楽など長年にわたり徳島の文化振興に従事。
2003年 NPO法人阿波農村舞台の会を設立
県内に多数残る農村舞台の保存・活用を図り、文化振興に取り組んできた。
2014年徳島県庁を早期退職
指定管理者として徳島県立十郎兵屋敷を運営し、文化資源を活用した街づくりに取り組んでいる。
2018年4月より同施設館長、阿波農村舞台の会理事兼事務局長
講演の内容
人形浄瑠璃のルーツから、講演を始めましょう。
人形浄瑠璃のルーツは、琵琶法師の語りだと言われています.

人形浄瑠璃は、大夫と太棹三味線と3名の人形使いで行われています。
それぞれの役割は、
①大夫は、一人でリズムやメロディーを奏で、情景・心情を表す。
②太棹三味線は、様々な音色で登場人物の心情や情景を表す。
③人形使いは、大夫の語りを支え、リードする。
というものです。
人形浄瑠璃は、400年以上かけて磨き上げられた「繊細で緻密な日本人の感性」が息づく芸術です。
大夫が使う床本は、赤で書かれた息継ぎ、声の高低を表しています、
現在も浄瑠璃だけは、五線譜の楽譜は有りません。西洋音楽の影響を受けていない唯一の音楽です。
人形使いも100年かけて、3人で行うようになりました。①主な動作、②足使い、③左使いと言う役割分担です。。
3人で行うことで、非常に繊細で緻密、かつ丁寧な動きが出来ます。


人形の説明では、男性・女性・悪人・侍・お姫様など沢山の人形があり、表情も話によって特徴を捉え、大仰に表現します。
「お姫様の顔が突然裂けて、角が出てきて髪を振り乱す」「道成寺の舞台での顔や手の所作には、紅葉手・つかみ手・三味線手・狐手・箏手など沢山ある」等々、さまざまな所作があります。
そして、全国でも唯一、人形浄瑠璃を毎日上演している劇場が、阿波十郎兵衛屋敷です。

温暖な気候で、肥沃な土地と水に恵まれた徳島。徳島の経済を潤したのは、藍染の染料「阿波藍」です。その経済力で阿波人形浄瑠璃が発展しました。
吉野川は水と緑に囲まれ、染料の藍を栽培する農家が3000軒以上もあったと言われています。
天然藍の染料は、藍を刈り取り、それを100日かけて発酵し、染料にするものです。発酵はアルコール発酵で、温度は70度にもなります。
染料で求められるいろは、赤と青ですが、青色だけは藍でなければ出来なかった。
全国から「阿波藍」を求めて大勢の人たちが徳島にきました。
当時の徳島は、吉野川流域の「阿波藍」、鳴門の「塩」、南の「材木」があり、栄えていました。
農村では祭の余興や芸能を、神様にお見せし喜んでいただき、その返礼として神様が豊作を恵んでくださるものだと考え、当時の人々は農村舞台を作りました。
農村舞台とは、神社の境内に建設され、別棟になった小屋です。
日頃は祭の直会や寄合の会場として、また楽車(だんじり)や祭の道具置き場として利用されていますが、前面の戸を開放すると小屋がそのまま舞台になり、前の広場が客席になります。
人形芝居用の野外劇場「農村舞台」が、現在、県内に約80棟残ってます。
舞台のカラクリは、舞台自体の場面展開と、舞台で使う背景のふすま絵を変化させる2つがあります。
(ふすまカラクリを映像で見せてくれましたが、何十枚ものふすまが上下に移動し、くるりと回り情景を変えるそのすごさに感動しました。)

<追記>
徳島では、今も、全国で最も多くの人形座や人形を作る人形師が活躍しています。
阿波人形浄瑠璃や、阿波踊りがある芸所が徳島です。
人形浄瑠璃をもっともっと全国に、いや世界の人に知ってもらいたいとの佐藤憲治館長様の熱い思いを感じました。
本日は、ありがとうございました。
写真 32期 常陸 章
記 34期 清水 進
受講者 108名
次回のご案内
日 時:令和7年6月23日(月)13時30分~15時30分
映 画:「舟を編む」
出演者 ・松田 龍平 ・宮崎 あおい