講話『自筆証書遺言の書き方と相続登記をめぐるトラブルについて』
- 開催日時
令和3年6月14日(月)
10時~ - 場所
徳島県立総合福祉センター
5階ホール - 講師
司法書士
田中 智也
講師プロフィール紹介
- 昭和54年生
- 徳島中学校卒業
- 徳島市立高校卒業
- 関西学院大学 法学部 法律学科卒業
- 大学卒業後、大阪市内の司法書士事務所で勤務
- 平成28年、徳島県司法書士へ登録の後、徳島市中前川町で開業
講話内容
冒頭、遺言の必要性について次のように触れています。
財産を所有する全員の方が遺言を書いておくべきです。
相続人の間で仲が良くない場合や、自分の健康が不安な場合は自分自身が健康なうちに出来るだけ早くとりかかりましょう。
遺言は一般的に自分の死後に財産を誰にどのように分配するかなどを書き記すものです。遺言に関しては民法によって色々な取り決めがあり、法律の形式に従って正しく作成しなければ、その遺言は無効となってしまうこともありえます。
では以下に遺言の書式等について、箇条書きにまとめた形で紹介します。
1.遺言書の種類
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
2.自筆証書遺言の書き方と注意点
1.書き方
自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文と、日付・氏名を自筆で紙に書いて、捺印して作成する遺言書のことです。使用する用紙に指定等はありませんが、必ず自分で書いたものでなければならず、ワープロやパソコン、代筆等は遺言として認められません。
財産目録については、パソコンで作成してもよいが、日付、氏名を自書(手書き)、印鑑(認印でも可)を押すこと。
2.注意点
自筆証書遺言を書くにあたっての遺言書は民法で決められた方法で書かないといけない。
- 2人以上の者が同じ用紙で遺言書を作ることができない。
- 遺言書を書き間違えた場合でも、適法に変更をすれば、始めから書き直さなくても良い。
- 遺言執行者(遺言書に書かれた内容を実際に行う人)についても記載をしておく。
- 遺言は15歳になれば書ける。
- 遺言で自分自身の財産を自由に処分できる。
- 遺言書が検認されると、遺言内容を実行させることができます。
- 検認が不要なのは公正証書遺言の場合のみです。
3.公正証書遺言の手続きの方法
遺言者本人が公証役場まで行き、2人以上の証人の立ち会いのもとで、遺言の内容を話して、それを公証人が書き記します。このようにして作成された遺言は公正証書遺言といいます。記録された文章は、本人と証人が筆記の正確さを確認し、それぞれ署名・捺印します。
なお、直系血族や未成年者、相続人になる可能性のある推定相続人、財産の受遺者などは公証人役場での証人になることはできません。
4.秘密証書遺言の手続きの方法
秘密証書遺言は、公正証書遺言と同じく公証役場で作成します。公正証書遺言との相違点としては、遺言書の内容を密封し、証人も内容を確認できないところです。自筆証書遺言と秘密証書遺言は、作成時点でその内容を遺言者本人以外に知られることがなく、プライバシーが守られますが、相続人は遺言者の死後、家庭裁判所で検認の手続きをしなければなりません。
5.相続登記にまつわるトラブル事例
- 自宅不動産に住み続けたい
- 不動産の売却時相続権を持っている人数が多い、海外に住んでいる、認知症になっているなど
- 会社経営の相続権 等多くの事例があります
講話『法務局における遺言書の保管制度について』
- 講師
徳島地方法務局供託課長
宮武 司
講師プロフィール紹介
- 昭和59年4月
高松法務局寒川出張所に採用 - 平成30年4月
松山地方法務局
今治支局総務課 - 令和 2年4月
徳島地方法務局
供託課 課長
講話内容
1.各種遺言に関するメリット・デメリット
①自筆証書遺言
<自筆証書遺言のメリット>
- 内容の秘密が確保できる。
- 遺言の存在も秘密にできる
- 特別な費用がかからない。
<自筆証書遺言のデメリット>
- 相続人が家庭裁判所へ検認の申し立てを行わなければならない。
- 検認を経ない遺言の執行は、5万円以下の過料に処せられる。
- ねつ造や改作の可能性がある。
- 死後、遺言書が発見されず、遺言書自体の存在が知られていない。遺言内容の実行が不確実である。
②公正証書遺言
<公正証書遺言のメリット>
- 開封時の家庭裁判所の検認が不要なので、手続きの手間や費用が浮く。
- 遺産分割協議が不要である。
- 公証人役場に原本が保管されており、万一、謄本や正本を紛失した場合も再発行請求することができる。
- あらかじめ、公証人によって遺言内容に違法や無効のないことがチェックされるため、確実に遺言を執行することができる。
<公正証書遺言のデメリット>
- 公証人手数料の費用がかかる
- 公証人と2人の証人(計3人の他人)に内容を一時的に公開される。
③ 秘密証書遺言
<秘密証書遺言のメリット>
- 内容の秘密が確保できる
<秘密証書遺言のデメリット>
- 相続人は家庭裁判所へ検認の申立てが必要となる
- 検認を経ないで遺言を執行すると5万円以下の過料に処せられる
- 遺言を作成したこと自体は、公証人と2人の証人(計3人の他人)に知られる
- 専門家のチェックを経ていないため、遺言の内容に不明確、不備等があった場合に相続人間での紛争を起こしてしまう可能性もある
- 費用がかかる
2.保管制度について
以上が本講話の概要ですが、相続を争続にしないために前もって遺言書を作成して、自分が亡くなった時に、誰にどのように財産を渡したいかを決めておく必要があるようです。
また不動産を負動産にしないために相続が発生したら、その都度、不動産の名義変更の登記を行う必要があるようです。
現在、日本国土の総面積のうち九州全土に相当する広さの土地が所有者不明であるという事実は、過去の相続登記が十分でなかったことを物語っています。
今後、こうした不備を増やさない為にも、法務局が新たに制定し令和2年7月10日より運用を開始した遺言の保管制度は有効であると考えられます。
次回の講話
7月7日(水)10時~12時
総合福祉センター5階ホール
『介護保険の仕組みと介護施設のサービスについて』
写真:32期 常陸
記:31期 蔭山